A Taste of Music Vol.152016 08

by ACOUSTIC REVIVE
image Contents

◎First Visit to Liverpool
 
Magical Mystery Tour
International Slavery Museum

◎My Music Library
 
PB’s CD Racks

◎Coming Soon
 
「LIVE MAGIC!」

構成◎山本 昇

Introduction

 今回のA Taste of Musicは、僕の自宅の仕事部屋からお送りします。というのも、使っているオーディオがかなり古くなってしまったので、スピーカーなどを入れ替えようと思っていたところ、A Taste of Musicをサポートしてくれているオーディオ関連メーカーが、そのセッティングなどを手伝ってくれることになったのです。今日は、そんなオーディオ・システム入れ替えの様子のほか、今年の“LIVE MAGIC!”の見どころ、さらにスタッフたっての要望で僕のCDライブラリーもご紹介します。

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東京・丸の内のコットンクラブで7月に行われたステージより。アルバート・リー(左端)とクリス・ファーロウ(右端)[写真提供/COTTON CLUB 撮影/米田泰久]

 その前に、まずは僕が最近観たライヴ、そして今年のイギリス帰省のことからお話ししましょう。前回、A Taste of Music Vol.14のストーンズの曲紹介の中で、クリス・ファーロウがゲスト出演するアルバート・リーの日本公演(コットン・クラブ)をお薦めしました。もちろん、僕も楽しみにしていたので、先日観に行ってきました。アルバート・リーはだいたい予想どおり、早弾きカントリー・ロック・ギターの名手としての演奏を聴かせてくれ、ロカビリーやロックン・ロールを中心に、ファッツ・ドミノなどの曲もやっていました。地味だけど、歌も上手でとても誠実だし、客席もちゃんと盛り上げる人。観ていて楽しかったですね。そして、スペシャル・ゲストとして登場し、数曲で歌を披露したのがクリス・ファーロウです。1960年代半ばから後半にかけてのロンドンの音楽シーンで、本格的にソウルフルな歌手として定評のあった人です。彼のために当時、ミック・ジャガーとキース・リチャーズが「Out Of Time」を、マンフレット・マンのマイク・ダーボが「Handbags and Gladrags(ハンドバッグと外出着)」を書き下ろしましたが、ライヴではこれらの曲も歌っていました。あと、60年代にクリス・ファーロウはアルバート・リーとサンダーバーズというグループにしばらくいたことがあります。その時代に、T.ボーン・ウォーカーで有名な「Stormy Monday Blues」を“リトル・ジョー・クック”という名義でシングルを出したことがあったんですね。歌はクリス・ファーロウで、バックのギターはアルバート・リーですが、セット・リストにはこの曲も入っていました。ほかには、本格派ロカビリアンとして知られるジョニー・バーネットの曲も演奏していました。そして、アンコールではクリス・ファーロウがボブ・ディランの「Girl from the North Country(北国の少女)」をア・カペラで披露しています。

 今年76歳になるクリス・ファーロウは、背中が曲がっていたり、胸が突き出ていたり、見た目が変わっているから調子が悪いのかなと思いきや、全然そんなことはなくて、とても元気で声もバッチリ出ています。かつてのように、大きく朗々とした素晴らしいヴォーカルでした。とても充実したライヴでしたね。

 もう一つ、ビルボードライヴ東京で、エディ・リーダーを久しぶりに観ましたが、こちらもとても良かったです。彼女も今年で57歳になり、子供も大きくなったと話していましたが、その歌声はほとんど変わっていません。1987年にフェアグラウンド・アトラクションでデビューした時、彼女には何か純粋なものを感じましたが、その印象は今も変わらず、すごく素敵でした。昔から彼女のソロ活動に参加しているギタリストにブー・ヒュワディンがいますが、この人は彼女のソロ・アルバム『Eddi Reader』(1994年)に入っている「Patience of Angels」を作曲しています。今回の来日公演にも参加して、この曲ではリード・ヴォーカルをとっていました。彼女の音楽は総じてフォーク・ロック的な感じですが、スコットランド人らしく、素朴で気取りのない雰囲気は昔からずっと持ったままなんです。ライヴでは、エイミー・ワインハウスの「Love Is A Losing Game」を歌っていました。後日、ラジオのリスナーが教えてくれたんですが、以前出したEPでカヴァーしていたんですね。

First Visit to Liverpool「マジカル・ミステリー・ツアー」と「国際奴隷博物館」

 僕はここ数年、梅雨時に帰省を兼ねてイギリスを訪れることにしています。今年も6月の終わりから7月の頭にかけての1週間ほど、ロンドンとエジンバラ、そしてリヴァプールを回ってきました。実はリヴァプールを訪れたのは今回が初めてのことでした。と言うと意外に思われるかもしれませんが、イングランドの北部は雨もよく降るし、ロンドンより寒い。子どもの頃は好き好んで行こうとは思わないんですよ。みんなが行きたがるのは、むしろ地中海のほうで。だから、僕もこの辺りにはほとんど行ったことがなかったんです。

 リヴァプールで参加したのは、その名も「マジカル・ミステリー・ツアー」という2時間ほどのバス・ツアー(笑)。これに乗って、ビートルズにまつわるいろんな場所を巡るんですが、予想以上に面白かったんです。各々のメンバーが育った家、歌に出てくる“ペニー・レイン”や“ストローベリー・フィールズ”などにも連れて行ってくれるんですが、ツアー・ガイドの話もそうとう面白くて、これはちょっとお薦めです。そして、ツアーの最後はキャヴァーン・クラブです。一度閉店し、その後再建された現在のキャヴァーン・クラブは、元の場所とはほんの少し違う場所の地下でパブ兼ライヴハウスとして営業していて、ほとんど観光客向けのアトラクションとなっています。ステージには、昼間からビートルズをはじめとする60年代の曲を弾き語る人が出たり、夜にはビートルズのコピー・バンドも出演します。まぁ、懐メロ感覚かもしれませんが、これはこれでけっこう楽しいものでした。リヴァプールという街もいい雰囲気です。イングランドの北部は、ロンドンとは違って素朴で土臭い感じがあるのですが、港町であるリヴァプールには古い建物もまだ残っていました。

 波止場には、「ビートルズ・ストーリー」というミュージアムもありますが、僕がリヴァプールを訪れたいちばんの目的は、同じくアルバート・ドックにある「国際奴隷博物館」を観に行くことだったんです。きっかけは、朝日新聞にこの施設に関する記事が載っているのを僕の女房が教えてくれて、「あ、これは観ておきたいな」と思ったんです。そもそも、どうしてそんな施設がリヴァプールにあるのか。その理由は先ほどのバス・ガイドの説明を聞いても分かります。

 ビートルズの「Penny Lane」で知られるリヴァプールの通りがありますが、これはジェイムズ・ペニーという昔の実業家にちなんで名付けられたものです。ただ、この人はかつて奴隷船を持ち、いわゆる奴隷貿易に関わっていたそうなんですね。あるとき、市議会か何かで、「ビートルズで有名になったとは言え、そういう過去を持っている人の名前を付けているのはいかがなものか」という意見が出たそうです。そこでいろいろと審議がなされ、「すでに有名な通りだから今になって変えるのもどうか」という意見と、「街の歴史を抹消するのは良くない。歴史の暗部も認めたうえで、リヴァプールと奴隷貿易の関係に踏み込んできちんと見せる博物館を造ってはどうか」という提案が出たそうなんですね。そうして2007年にオープンしたのがこの「International Slavery Museum」です。ここを訪れれば奴隷貿易の様々な歴史が分かる。展示もかなり興味深いもので、とても勉強になりました。ちなみに入館料は無料です。

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My Music Library バラカン邸のCD棚を公開!

 さて、僕の仕事部屋は、玄関を入った奥にあるのですが、そこまでの廊下は基本的に僕しか使わないわけだから、この家を建てるときに、女房が廊下の壁一面をCD用の棚にしてはどうかという、とてもありがたいアイデアを出してくれたんです。計算すると、この壁だけで5,000枚以上のCDを収納できています。

 この棚の分類ですが、実はABC順にはなっていません。ここに引っ越してきたときに、とにかくどんどん入れていくという感じだったから、大まかなジャンル分けしかしていないんですよ。向かって左側から2つ分くらいがイギリスもので、2つ目の下のほうがアイルランド。かと思えばまたイギリスに戻ったり(笑)。3つ目はコンピレイションものだけど、アフリカの作品もちょっと混ざっていて、下はその他のワールド・ミュージック。次の棚はアメリカの音楽が続きます。ただしその真ん中あたりには女性歌手が3段分ほどあります。その隣は、上がブルーズでの下は突然レゲエになる(笑)。ジャマイカものがけっこう続いて、その下はその他のカリブや南米のもの。お次の棚は一番上がゴスペル、その下はいろんなリズム&ブルーズやロックン・ロール、ブラック・ミュージックのコンピレイション。その下にはまたブルーズが続きます。その横のつながりで、隣の棚にはゴスペルがきています。そして、ニュー・オーリンズのものがしばらくきて、そのコンピレイションを挟んで、今度はソウルがポンポンと。一番下にはヒップ・ホップが。一番右端の棚はまたブラック・ミュージックですね。上がコンピレイションもので、その下にはソウルやファンク、モータウンがあります。60年代のスタックスやアトランティック・レーベルのものがあるのもこの辺りです。アーティストで言うとレイ・チャールズやカーティス・メイフィールド、アリーサ・フランクリンがあるかと思うと、スライとかパーラメントとかも(笑)。あとはもう少し新しめの90年代のネオ・ソウルなんかもありますね。

 というふうに、一見バラバラな感じですけど、何がどこにあるか、僕には瞬時に分かります。でも、僕以外の人には探せないでしょう。

 CDは仕事部屋にもたくさんあって、机の後ろにある黒い大きな引き出しは3~4年前に作ってもらった収納家具で、左から順に、全部女性ヴォーカル、隣はイギリスもの、その隣がソウルやブラック・ミュージックやニュー・オーリンズ、次がブルーズとジャズ、次がアフリカ、一番右端が古いソウル・ミュージック。これらは息子が手伝ってくれたおかげで、だいたいABC順にしてあったりして、わりと整理されています。その上の壁に設えたCD棚は全部ジャズです。奥に立っているタワー型のCDラックはアメリカのロックやフォークです。

 仕事部屋につながっている可動式の書架が4つありますが、ここには日本人ミュージシャンの作品、クラシック、サウンドトラック、キューバやブラジルなどの南米もの、フラメンコなどのラテンもの、アジア~太平洋の音楽などのCDの他、普通の棚に入れるのが難しいボックス・セットや紙ジャケCDを収納してあります。紙ジャケは背表紙の幅が狭くて見にくいから、この書架も僕じゃないと探せないでしょうね。その他、未整理のCDはとりあえず床に積んであるという感じです。この他、もちろんアナログ・レコードやレーザー・ディスクなんかもあるわけですが、それらは納戸や別室に分けて保管しています。全部で何枚あるか? それは数えたことはないし、数える気にもなりませんが……(苦笑)、まぁCDはざっと2万枚以上、LPは3,000枚くらいでしょうか。

 CDの収納の仕方がこんなふうになってしまったのは、先ほども話したように、引っ越したときにとにかく収めないといけなくて、たまたま荷物がジャンルごとに分けられていたからです。それを、近いジャンルは一緒にしてABC順に並べ直すというようなことをするにはまた一旦取り出さなければならず、気が遠くなる作業なのでやらなかったんです。まぁ、何度も言うようですけど、僕にはすべてが分かっているから(笑)、仕事で必要なCDもすぐに探し出せます。何がどこにあるかは、映像的な記憶として頭の中に残っているんですね。

 整理されている棚は、“姓”のABC順で並べています。例えば、ソウル中心の男性ブラック・ミュージックの棚では、アーサー・アレクザンダーから始まって、ブッカー・T & ジ・MG’s、ジェイムズ・ブラウン、ソロモン・バーグ、ジェイムズ・カー、レイ・チャールズと続きます。最後はスティーヴィー・ワンダー、そしてザップという具合です。

 分類に困るのはやっぱりコンピレイション作品ですね。とりあえずジャンルごとに分けてしまっていますけど、はっきり言ってすべては把握しきれていません。だから、よくやるのは「ALLMUSIC」や「Discogs」といったサイトで検索してジャケットを見る。「あ、これなら持ってる」と気付いて探し直すことが少なくないこの頃です(笑)。そして、CDを管理する上でとても大事なのが、一度使ったCDは必ず元の場所に戻すということ。ラジオの番組を終えて帰ってきたら、どんなに遅くなっても寝る前に全部、元どおりにします。そうしておかないと、次に使うときに絶対見つからなくなって困りますから。

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仕事部屋に向かう廊下に備え付けられた大きなCD棚

 ここではラジオの選曲を行うのも大事な仕事の一つで、主にパソコン(MacBook Pro)を使ってリストにしていく作業となります。まずは番組のリスナーから寄せられたリクエストを参照しながら、自分がかけたいと思う曲を、とりあえず順番は考えず、どんどん書き込んでいきます。そのリストを基に、実際の選曲では、その時の気分や雰囲気、タイムリーな出来事や話題など諸々を考えながら構成していきます。あとは番組でお知らせするライヴ告知など、いろんな情報も整理しておかなければなりませんね。

 ところで、僕は仕事のことを抜きにして音楽を聴くということはほとんどありません。まぁ、こういう仕事をしている人は誰でも同じでしょう。カー・ステレオを聴いているときでさえ、たいていは選曲のことを考えています。でも、嫌いな音楽を聴いているわけではありませんから、つらいことではないんですよ。

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Coming Soon バラカンさんが自ら語る「LIVE MAGIC!」の見どころは?2016年10月22日(土)・23日(日)恵比寿ガーデンプレイス

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 今年も僕が監修するルーツ・ミュージックの祭典「LIVE MAGIC!」を10月22日(土)・23日(日)に開催します。3回目となる今回も、東京の恵比寿ガーデンプレイスで、“ザ・ガーデンホール”と“ザ・ガーデンルーム”という二つの会場を中心に行います。ガーデンホールの手前にあるラウンジでは、昨年よりも多めにライヴをやります。今回は、日本人のミュージシャンもわりとルーツ・ミュージック寄りの人たちが参加してくれます。例えば、初日にはThe Swinging Boppersと、2日目はトリオで出演する吾妻光良は日本のジャンプ・ブルーズ界の帝王として、どんな演奏を聴かせてくれるか、とても楽しみですね。その吾妻光良に見出されたバンバンバザールは、アクースティックなフォークやブルージーな感じに加えて、ジャグ・バンドのような楽しさを持っている人たちです。そして、日本勢では、第1回から参加し続けてくれている濱口祐自とReiも出ます。濱口祐自は2日とも出ますが、今年は本人の希望でラウンジのみの出演となります。大きなステージよりも、お客さんが食べたり呑んだりしているカジュアルなところでやりたい人なんですよ。

 海外勢のヘッドライナーには、A Taste of Music Vol.10でも紹介したスライド・ギターの名手、サニー・ランドレスを呼びました。4年ぶりの来日になりますが、ギタリストに会う度に彼のライヴが楽しみだと言われます。ギタリストにモテるギタリストなんですね。他の誰とも違う、本当にユニークなギタリストですが、彼が素晴らしいのはそれだけじゃなくて、歌もいいし、作曲も上手だというところ。2015年に出たアルバム『Bound By The Blues』は、久々にブルーズだけのレコードでしたが、ルイジアナで育った彼は、ラフィエットという街を活動の拠点としています。そのラフィエットを中心としたザイディコという音楽の帝王と呼ばれたクリフトン・シェニアのバンドでランドレスはデビューしたと言っていいのですが、そういう極めてルイジアナ的な音楽も得意としています。もちろんブルーズもあるし、ロック寄りの曲もある。これまでバンドはシンプルなトリオ編成でやってきて、今回もトリオでの来日公演となっています。両日とも出演しますが、プログラムは日によって変えてもらうつもりです。片やブルーズ中心、もう片方は彼が持っているその他の音楽をやってもらう予定なので、2日とも来ていただける人はそれぞれ別のライヴを体験できると思います。

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Sonny Landreth

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吾妻光良


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ZabaDuo

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Arvvas

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バンバンバザール

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Rei

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濱口祐自

 海外からやってくる人で、ザバデュオ(ZabaDuo)というベイスとパーカッションの二人組がいます。ベイシストはチャーリー・ウトンというアメリカ人で、彼もサニー・ランドレスと同じくルイジアナの出身です。一時期はロイヤル・サザーン・ブラザーフッドというグループのメンバーでもありました。もう一人のラファ・ペレイラはアメリカ在住のブラジル人で、ドラムとパーカッションを担当します。パンデイロというブラジルのタンバリンのような楽器がありますが、彼はそれがすごく上手なんですよ。アルバムでは、基本的にラファのパンデイロとチャーリーのベイスによるインストゥルメンタルが多いのですが、とても面白いんです。昨年の「LIVE MAGIC!」ではジョナサン・スケールズ・フォーケストラ(Jonathan Scales Fourchestra)というスティール・ドラムとベイスとドラムズの三人組に来てもらいましたが、観た人はみんなすごく印象が良かったです。ザバデュオもそれにちょっと似た感じで、ベイスとパーカッションだけで十分に楽しめます。

 アルバムはまだ1枚しか出していなくて、アメリカでもそれほど知られていませんから、日本ではほとんど誰も知らない存在ですけど、ラジオではすごく反応がいい。ライヴを観れば、絶対に喜んでもらえると思います。このフェスティヴァルでは大スターを呼ぶ代わりに、まだ知られていないけどすごく面白い多くのミュージシャンを支援し、日本の音楽ファンに届けたいと思っています。ぜひ、みんなで最初のファンになってください。

 アルヴァス(Arvvas)というノルウェイのユニットは、歌とベイスの二人組。なんだか今回の「LIVE MAGIC!」は低音重視の傾向ですが(笑)、このデュオのベイシスト、スタイナー・ラクネスは、どちらかというとジャズ畑の人です。ソロ・アルバムでは、ウッド・ベイスを弾きながら、ちょっとトム・ウェイツを思わせるような低い声でアメリカーナ───つまりジョン・プラインとか、そういうフォークっぽいタイプの曲を歌ったりして、面白い作品になっています。もう一人は、ノルウェイの北極圏に住むサーミという民族であるサラ・マリエル・ガウプという女性です。北の方の民族は、アイヌもそうですが、どこか似た文化を持っているように感じますね。サーミの歌も、アイヌのそれにちょっと共通するところがあって、例えば自然界の何かについて即興で歌ったりするんですね。そんな彼女の歌と彼のベイスだけの、素朴と言えば素朴な音楽ですが、これまた観ててとても面白いんです。サラはサーミ語で、スタイナーは英語で交互に歌ったり、かけ合いになったりしますが、とにかくユニークで他ではちょっと聴くことのできない音楽ですから、ぜひ楽しみにしていてください。

 ユニークと言えば、先ほどお話しした吾妻光良も大変楽しみです。The Swinging Boppersは、リズム&ブルーズとスウィング・ジャズが一緒になったような、まぁ、古いタイプの音楽ではありますが、吾妻光良という人が弾くのは、とにかくエクセントリックなブルーズ・ギター。日本でこんなにすごいギターを弾く人はなかなかいないと思います。突然、突拍子もないフレーズを弾くような、本当にオリジナリティのあるミュージシャンです。あと、吾妻さんの歌は歌詞がとてもユーモラスで可笑しいんです。わざと冗談バンドっぽくしている部分はあるんですけど、それがエンターテインメントとしてすごく面白いし、独特のサウンドと併せて、ファンはそれも楽しみにしているのでしょうね。

PB's Sound Impression 仕事部屋のオーディオのアップ・グレードにチャレンジ!「明らかに音が良くなったのが分かります」

 音楽と切っても切れない生活を送るバラカンさんにとって、仕事部屋のオーディオは大事な道具の一つです。この度、バラカンさんはその一部のリニューアルを決断。スピーカーは長年親しんだJBL 4312からHarbeth C7ES-3に、プリメイン・アンプをKenwood KA-4050RからCambridge Audio TOPAZ AM10に入れ替え、新たにDAコンバーターChord 2Quteを加えて、パソコンによる音楽ファイルの再生も大幅にアップ・グレードすることに挑戦。また、これを機に“アコースティックリヴァイブ”のライン/電源ケーブルをはじめ各種オーディオ用アクセサリーも多数導入。同社の石黒さんと岩谷さんによるメンテナンスも行われました。

 入れ替え作業の中では、Macbook ProとDAコンバーター2QuteをつなぐUSBケーブルを汎用品からアコースティックリヴァイブのUSB-1.0PLSに替えたり、2Quteの電源を、付属のACアダプターから同じくアコースティックリヴァイブのバッテリーリファレンス電源RBR-1に替えて駆動させてみるという、ややマニアックな比較試聴をZABA DUO「Suspended」で行いましたが、「聴き比べてみれば確かに違いますね。派手すぎたり、硬かったりした音が、深さを感じさせる丁寧で上品な音に変わりました。僕には格段に音が良くなったと感じました」と、バラカンさんにとっても嬉しい結果となったようです。極めつけは、「バラカンさんのお宅の電源全体をきれいにして、どのお部屋で音楽を聴いてもいい音で鳴る新製品」(石黒さん)という、同ブランドの電源コンディショナーRPC-1をセットしての比較試聴。「つないだ途端、スタジオの中にいるような感じになった」と、バラカンさんは驚きの表情を隠しません。

 では、新しくなったシステムはバラカンさんにはどう聞こえたか。その印象を語っていただきましょう。

 「最近は、オーディオに詳しい方にいろいろ教えてもらう機会が多くて、このHarbethというイギリスのスピーカー・メーカーも正直言ってそれまで知らなかったんですが、BBCがモニター・スピーカーとして使っていたと聞いたりして興味を持って、今回入れ替えてみることにしました。石黒さんたちがいろんなアクセサリーを付け足したり、メンテナンスを行ってくれたこともあって、以前に比べて音のディテールがクッキリと聴き取れるようになった感じがします。試聴ではZABA DUOのほか、リトル・フィート『Dixie Chicken』のCD、ハービー・ハンコック『Head Hunters』のアナログ・レコードなどを聴きましたが、楽器一つひとつの輪郭が明瞭になって、音が立体的になり、奥行きが感じられるようになりました。そして、一番ビックリしたのが、パソコンの中の音楽がとてもいい音で聴けるようになったことです。おかげで仕事もより楽しくなりそうですね」

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システムのリニューアルを機に行われたメンテナンス作業は、接点復活剤(アコースティックリヴァイブの導通向上クリーナーECI-50)なども使い丁寧に行われた

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すべてに“PC-tripleC”と呼ばれる新導体が使われているのがアコースティックリヴァイブ製ケーブル類の特徴。「この特殊な銅は、鍛造製法によって密度をつまらせ、なおかつ、通常は縦方向にある結晶構造を電気の流れる横方向にしています」と語る石黒さん。ケーブルによる音質変化については、「“ケーブルを変えると情報量が多くなる”という言い方がされますが、それは物理的にちょっとおかしな話で、そういうふうに感じられるのは、ノイズによってマスキングされ隠れていたものが見えるようになったということなのです」と説明する

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パソコンで再生する音の改善も今回のアップ・グレードのテーマ。イギリスChordの高性能なDAコンバーター2Qute(右手前)は、アコースティックリヴァイブのバッテリーリファレンス電源RBR-1(右奥)とともにクオーツ・アンダーボードTB-38Hに載せて振動を制御。また、Macbook ProのUSB端子やLANポートには同ブランドのターミネーターを挿してPCのノイズ軽減を図っている

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プリメイン・アンプも英国のブランドCambridge Audio TOPAZ AM10(左上)に入れ替えたことで駆動力が大きく向上。そのほかは元々あった機材で、Sony XA3000ES(SACDプレーヤー)、Kenwood MDF-7020(MDデッキ)、Teac C-3RX(カセット・デッキ)。これらは全てアコースティック・リヴァイブのRHB-20、RST-38H、RIQ-5010などアンダーボードやインシュレーターで振動対策されている

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木目がきれいな電源コンディショナーRPC-1。電源に挿すだけで音質が改善されるという驚きの新製品。隣のアナログ・レコード・プレーヤーはPioneer PL-50LII

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リニューアルされたシステムを試聴。新たに導入したHarbeth C7ES-3に送られる音自体も大幅に改善され、部屋の主も満足そうな表情に

◎試聴システム

プリメイン・アンプ:Cambridge Audio TOPAZ AM10
スピーカー:Harbeth C7ES-3
スピーカースタンド:Acoustic Revive RSS-600(特注タイプ)
DAコンバーター:Chord 2Qute
SACDプレーヤー:Sony XA3000ES
アナログ・レコード・プレーヤー:Pioneer PL-50LII

◎オーディオ・アクセサリー(全てAcoustic Revive)

アンプ用電源ケーブル:POWER STANDARD-TripleC-FM
ラインケーブル:RCA-1.0TripleC-FMLINE-1.0R-TripleC-FM
LANターミネーター:RLT-1
USBターミネーター:RUT-1
USBケーブル:USB-1.0PLS
バッテリーリファレンス電源:RBR-1
グラウンディング・コンディショナー:RGC-24TripleC
アンダーボード:RHB-20RST-38HTB-38H
クォーツインシュレーター:RIQ-5010
超低周波発生装置:RR-777
電源コンディショナー:RPC-1 ほか