A Taste of Music Vol.192017 03

by Timelord
image Contents

◎Live Review
 
Cowboy Junkies

◎Recommended Albums
 
Chris Thile『Bach: Sonatas and Partitas, Vol.1』, Kyle Shepherd『Into Darkness』, Joni Mitchell『Hejira』, David Bowie『★』,
Willie Nelson『Summertime』, 浜田真理子『Town Girl Blue』,
Allen Toussaint『American Tunes』, Toumani Diabate『Kaira』

◎Coming Soon
 
Tigran Hamasyan

構成◎山本 昇

Introduction

 今回のA Taste of Musicは、東京の神楽坂にある音楽ホール「TheGLEE(ザグリー)」からお届けします。とても響きがいいというこのホールのステージに最新のオーディオ・システムを設置して聴いてみようという試みです。システムの中での注目は、イギリスのハイエンド・オーディオ・ブランド“CHORD”の新製品でCDトランスポートのBlu MkIIとD/AコンバーターのDAVEの組み合わせ。細かいことは分かりませんが、CDからこれまでにないような音を引き出してくれるのだとか。というわけで、今回はあえてCDにこだわって試聴していきたいと思います。

Introduction 淡々とした雰囲気で聴かせたカウボイ・ジャンキーズの来日公演

 今回も少し、最近観たライヴのお話をしたいと思います。今年1月、カウボイ・ジャンキーズが28年ぶりの来日公演を東京と大阪の「ビルボードライブ」で行いました。僕は21日の「ビルボードライブ東京」でのステージを観ました。1985年に活動を開始したカウボイ・ジャンキーズはカナダの出身で、派手さのないルーツ・ロックを、どちらかというとちょっと暗い雰囲気でやってきたグループです。大きく話題になることはあまりないのですが、何かしら聴く人の心に残るものを最初から持っていたバンドなんですね。メンバーはみんなそれなりの歳になりましたが、演奏力は全然衰えていません。ギターのマイケル・ティミンズ、ヴォーカルのマーゴ・ティミンズ、ドラムズのピーター・ティミンズの3人兄弟に、ベイスのアラン・アントンを加えた4人組。今回のライヴでは、もう一人のギタリストのカール・スパタロ、マンドリンとハーモニカとパーカッションのジェフリー・バードを加えた6人編成でした。

 特に難しいことをやっているわけではないのに、非常に音楽的にいいものになっている。今回のライヴも、とても満足感の高いものでしたが、なぜそうだったのかを言葉で説明するのはなかなか難しいですね。ただ、一つの要素として、マーゴの歌の説得力というのはあると思います。女性としての魅力を発揮しようとするわけでもなく、あくまでも歌手としてその歌を淡々と聴かせます。ステージでも、初めは特におしゃべりもしません。客席がノッてくると、少しずつ曲の紹介もするようになるのですが、淡々とした感じはやはりそのままです。

 ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「Sweet Jane」もカヴァーしている彼らですが、音楽的なルーツは、一言で言えばアメリカーナ的なものということになるでしょう。でも、大本にはブラック・ミュージックの影響もあると思います。大ヒット曲があるわけでもなく、ライヴはどこも小さな会場で行っている彼らですが、先日のライヴでマーゴは最後に「あなたたちのように、会場に足を運んでくれる人がいる限り、私たちは演奏し続けることができます」と言って感謝の気持ちを伝えていました。音楽業界では格差が広がるばかりですけれど、こういうバンドがいまも活動できていることには、どこかほっとしますね。いま聴いているのはアルバム『The Trinity Session』(1988年)からの「I Don't Get It」ですが、演奏もしっかりしていて、いかにもカウボイ・ジャンキーズらしい音ですね。この淡々とした雰囲気こそ、彼らのすべてなのかもしれません。さて、次は何年後にお目にかかれるでしょうか。

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ヴォーカリストのマーゴ・ティミンズ


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ビルボードライブ東京でのステージから

Recommended Albums ピーター・バラカンが選ぶ「音のいいCD」

 冒頭にお話ししたように、今回は“CHORD”のBlu MkIIという新しいCDトランスポートを含むハイエンドなオーディオ装置で試聴できるということで、僕が考える「音のいいCD」を何枚か持ってきました。もちろん、録音の優れたCDは数多く存在すると思いますが、今日ご紹介するのは、あくまでもいまの僕がいい音、いい録音だと感じている作品ということです。そして、どれも「いい音楽」であることは言うまでもありません。その中でも、今回はわりとシンプルで、音の良さが分かりやすそうなアルバム、あるいはこのシステムでぜひ聴いてみたいと思うアルバムを中心に選んでみました。

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音楽ホール「TheGLEE」にて、極限まで高めたCD再生を愉しむ

Recommended Albums マンドリンで聴くバッハのソナタ Chris Thile『Bach: Sonatas and Partitas, Vol.1』

 まずはいちばんシンプルなものからいきましょう。パンチ・ブラザーズのマンドリン奏者、クリス・シーリーのアルバム『Bach: Sonatas and Partitas, Vol.1』(2013年)です。1曲目「Sonata No.1 in G minor, BWV 1001: I. Adagio」から聴いてみます。うん、これを選んで正解でしたね。ほとんど同じ部屋にいるような感じ(笑)。弦をはじく音の生々しさがすごく伝わってきます。マンドリンとヴァイオリンは弦のチューニングが全く同じなので、譜面もそのまま使えるそうですが、それにしてもバッハのソナタをマンドリンでここまで演奏するのはすごく難しいと思いますけど(笑)。

 “モダン・ブルーグラス”とも形容されるパンチ・ブラザーズは、確かに編成を見ればブルーグラスのグループらしく弦楽器のみの5人組ですが、やっている音楽はちょっとジャズっぽい曲もあれば、ほとんどプログレのような曲もあります。彼らのルーツの一つにブルーグラスがあることは間違いないけれど、その他にもさまざまな要素を合わせ持っています。そして、メンバーがみなウソのように上手い(笑)。昨年、ブルーノート東京で観たライヴも素晴らしいものでしたから、またの来日が期待されます。このクリスは、パンチ・ブラザーズの活動と並行して、いろんなミュージシャンと共演しています。『The Goat Rodeo Sessions』ではヨーヨー・マらと一緒にやったり、つい最近ではピアニストのブラッド・メルダウとの共作『Chris Thile & Brad Mehldau』が発売されました。マンドリンとピアノと歌だけの、すごく面白いアルバムです。さらにその次には、ヨーヨー・マとエドガー・マイヤーとのトリオで、やはりバッハのソナタに取り組んだ作品がこの春には出るようです。次々といろんな作品を繰り出してくるクリスは今年で36歳ですが、もう天才と言っていいでしょうね。

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『Bach: Sonatas and Partitas, Vol.1』Nonesuch Records

Recommended Albums 九州の古民家で行われた真夜中の録音 Kyle Shepherd『Into Darkness』

 続いてはまたシンプルな音楽でいきましょう。今度はピアノです。南アフリカのミュージシャン、カイル・シェパードが九州は福岡県にある「SHIKIORI」という古民家で録音した『Into Darkness』(2014年)です。タイトルどおり、レコーディングは夜中に行われたそうです。だからお聴きのとおり、虫の鳴き声が入っています。このシステムなら、そのあたりもいっそう感じられるというものですね。7曲目の「Salaam(Peace on Earth)」は、あとで本人がアルト・サックスをダビングしているんですね。今日のオーディオでは、サックスの息遣いがとても生々しく聞こえました。これは、パソコンなどのスピーカーでは分からないことですね。まるでその日本家屋にいるような気がしました。

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『Into Darkness』ソングエクス・ジャズ SKOR 1001(SONG X 020)

Recommended Albums ミニマルな演奏を引き立てたミキシング技術 Joni Mitchell『Hejira』

 さて、次はちょっと作り込んだ音のCDを聴きたいので、ジョーニ・ミッチェルをかけてみましょう。彼女が1976年に出した『Hejira』は、こうしたシステムでぜひ聴いてみたいと思っていたアルバムです。まずはギターの音が印象的な「Amelia」です。ジョーニ・ミッチェルのギターはチューニングも弾き方も独特で、そのあたりも楽しかったのですが、それ以上に驚いたのがリード・ギターのラリー・カールトンです。この曲では、ラリーの高いところの音がこんなに強く出ていたのかと、ちょっとびっくりしました。隠し味となっているヴィクター・フェルドマンのヴァイブズもいいけど、ラリーのギターが素晴らしい。これまで何十年も聴いてきたアルバムですけど(笑)、あまり認識できていませんでした。音の出方が全然違うんでしょうね。

 もう1曲、ジャコ・パストリアスがベイスを弾いている「Black Crow」を聴いてみましょう。この曲はとてもシンプルな編成で、ジョーニ・ミッチェルのリズム・ギターと歌、ラリーのリード・ギター、そしてジャコのベイスだけで成り立っています。ドラムもキーボードもいない、ミニマルな演奏をミキシングの技術でものすごく奥行き感を出していますね。これもいままではあまり分かっていなかったかもしれない(笑)。このオーディオで聴くと、そういう遠近感というのか、そんなものが十分に伝わってきますね。

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『Hejira』ワーナーミュージック WPCR-80284

Recommended Albums 複雑な音空間を形成しているボウイの遺作 David Bowie『★』

 デイヴィッド・ボウイの『★(Blackstar)』(2016年)は今年のグラミー賞で、「最優秀ロック・ソング」をはじめとする5部門での受賞を果たしましたが、その中には「最優秀レコーディング・パッケージ」と「最優秀エンジニアド・アルバム(クラシック以外)」も含まれます。このように、音も評価されているアルバムから僕はいま、1曲目のタイトル曲「★」を目を閉じて聴いていました。そうしたら、例えばサックスが入る辺り、その音を少しずつ上げていたり、ある楽器には急にエコーをかけたり、ミキシング・エンジニアの意図が、このシステムではより鮮明になり、すごくよく分かりました。全体的に少なくない音数が上手く処理されていて、かなり複雑な音空間が出来上がっていると思いました。

 低音の音作りにも現代的なものを感じさせますが、ちなみに今作のベイシストのティム・ルフェーヴは、現在のテデスキ・トラックス・バンドのメンバーでもあります。元々はニューヨークで、わりとフリーなジャズをやっていた人で、テデスキ・トラックス・バンドに入ったのはちょっと意外でしたね。そして、マーク・ジュリアーナのドラミングも独特なものがあります。

 かなり変わった印象のアルバム『★』は、ボウイが亡くなる直前に発売されました。歌詞を読むと、自分の人生がそう長くはないと彼が感じていることは匂わせていますし、全体として明るい感じのアルバムではありません。重みがあるし、サウンドも濃厚です。最後のアルバムになると知っていながらなおも前進し続けたことは、ミュージシャンの姿勢として素晴らしいと思いました。

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『★』ソニー・ミュージック SICP-30918

Recommended Albums まるで生で聴いているようなリアリティ Willie Nelson『Summertime』

 『★』とは打って変わって、すごくオーガニックなサウンドです。ウィリー・ネルソンがガーシュウィンの曲ばかりを歌う『Summertime』(2016年)から、11曲目に入っているタイトル曲をかけましょう。……素晴らしい! ウッド・ベイスの感じもいいし、バランスが絶妙ですね。ミュージシャンたちの姿がそのまま見えてくるような気がします。そして、ヴォーカルについて言えば、先ほどのジョーニ・ミッチェルは40年も前の録音ですが、それに比べてウィリー・ネルソンの歌はまるで生で聴いているようでした。どの楽器を聴いても、すごくリアリティのある音がしていますね。ここまで生々しいと感じるアルバムは、これまであまりなかったと思います。ウィリー・ネルソンは今年で84歳になりますが、早くも次のアルバムを出すらしく、そこではトランプ政権に物申す曲もあるそうです。

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『Summertime』Legacy Recordings

Recommended Albums シンプルなのに不思議と印象に残る音楽 浜田真理子『Town Girl Blue』

 次は久保田麻琴がプロデュースした浜田真理子の出たばかりの新作『Town Girl Blue』(2017年)から「You Don't Know Me」を聴きます。とても繊細な録音が行われたことが分かりますね。このアルバムを作るにあたって、麻琴さんはかなりのこだわりをもって臨んだそうです。レコーディングが行われたのは、ヴィンテージな機材が揃っているという池袋の「STUDIO Dede」で、プロモーション・ビデオを観る限り、アナログのテープも使っているようですね。ウィリー・ネルソンのアルバムのようなリアルさとは違うかもしれないけれど、こだわりの一端は感じられたように思います。浜田真理子は、とにかく素朴なミュージシャンで、このアルバムを通して聴いても、彼女の特徴を言葉で言い表すのはちょっと難しい……。でも、不思議と印象に残るんです。それがなぜなのかは、僕も未だに分からないんですよ。やっていることは本当にシンプルなんですけどね。

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『Town Girl Blue』ヴィヴィド・サウンド VSCD9725

Recommended Albums 上品な演奏を聴かせる最後のアルバム Allen Toussaint『American Tunes』

 2015年の11月に亡くなったアラン・トゥーサントの最後のアルバムが『American Tunes』(2016年)です。「Lotus Blossom」あたりを聴くと、音そのものはそうでもないのですが、なんとなく演奏の雰囲気が古典的な感じがしますね。ちなみにこの曲のサックスはチャールズ・ロイドです。先日、ロイドにインタヴューしたときにこのアルバムのことも聞いてみたら、当初は参加する予定ではなかったそうです。たまたまL.A.からメンフィスに帰ろうとしていたときにオファーの電話がかかってきて、あまり時間がなかったそうなんですが、すぐにクルマを回してくれたので、ちょっと寄って2曲だけ演奏することができたのだそうです。チャールズ・ロイドの『I Long To See You』と同じく、このアルバムにもギタリストとしてビル・フリゼルとグレッグ・リースが参加しています。

 プロデューサーは、前回のスタジオ・アルバム『The Bright Mississippi(2009年)と同じくジョー・ヘンリーが手掛けています。この『American Tunes』では主に、デューク・エリントン、ビル・エヴァンズ、ファッツ・ウォラー、アール・ハインズ、そしてプロフェサー・ロングヘアなど、昔のピアニストたちの曲を取り上げていますが、すごく上品な印象の演奏でしたね。

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『American Tunes』ワーナーミュージック WPCR-17362

Recommended Albums 強烈な演奏力を見せつける一発録り Toumani Diabate『Kaira』

 最後はマリの有名なコラ奏者、トゥマニ・ジャバテの演奏を聴きいてみましょう。西アフリカ発祥と言われるコラは、このあたりに伝わる伝統的な撥弦楽器。個人的にも大好きなこのアルバム『Kaira』(1988年)が、今日のシステムでどう聞こえるかが楽しみで持ってきました。早速、2曲目の「Jarabi」をかけてみます。これはオーヴァーダビングをしていない一発録りですが、ものすごい演奏力であることが分かりますね。ただ、普通のシステムで聴いたときにはそうは感じなかったのですが、このシステムで聴くと、ちょっとリヴァーブをかけ過ぎているかなという気もしました。ここまで響かせなくても良かったような気がしますが、これは余計なコメントか(笑)。

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『Kaira』ビデオアーツ・ミュージック VACK-1043

Coming Soon 注目のピアニストによる、ちょっと辺鄙なジャパン・ツアー Tigran Hamasyan Solo TOKYO-OKINAWA-SHIKIORI-YAKUSHIMA

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 アルメニア生まれのピアニスト、ティグラン・ハマシアンが日本公演を行います。他のピアニストも注目する、話題のミュージシャンの一人ですね。この人の音楽を、ジャンルで特定するのはほぼ不可能でしょう。どちらかというとジャズ・ミュージシャンと捉えられることが多いと思うけれど、そうとも言い切れない。すでにアルバムはけっこう出していますが、その音楽は作品ごとに変わっていくから、毎回「えー! こんなこともやるの?」と、場合によってはちょっとついていけないときもあるけど(笑)、新作『An Ancient Observer』は、僕はすんなりと聴くことができました。4月5日に発売される日本盤には『太古の観察者』というタイトルが付いていて、彼が作った曲のほか、数100年前というアルメニアの古い曲も収録しているようです。曲によってピアノのソロだったり、ビートが付いたものもある。本人はありとあらゆる音楽を聴いているようで、ロック的な瞬間があったり、ちょっとヒップホップの影響が感じられる場面もあったりします。今回の来日公演は一人で行うようですから、このアルバムからの曲も演奏されるかな(笑)?

 この日本ツアー、最初の東京は浜離宮の「朝日ホール」(5月24日)ですが、その他はけっこう辺鄙なところを回るんですね。5月26日(金)は沖縄の「がらまんホール」、5月27日(土)は先ほどお話しした福岡県宮若市の「古民家SHIKIORI」、そして5月28日(日)は屋久島の「屋久島総合自然公園」です。屋久島は雨の多い場所ですが、一体どんなコンサートになるのか。面白い体験になりそうですね。

 ところで、「古民家SHIKIORI」では、僕も一足先に4月7日にイヴェント「出前ラジオ」を行います。もしご興味があればぜひいらしてください。

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『太古の観察者』ワーナーミュージックWPCR-17700

PB's Sound Impression

 今回、バラカンさんが試聴を行った「TheGLEE(ザグリー)」は、小規模ながらユニークな音響特性を誇る音楽ホールです。同ホール文化事業部の甲壮志(きのえ・つよし)さんによると、目指したのは「“森の響き”がするホール」で、「響き過ぎず、デッド過ぎず。ホールとスタジオの中間くらいの残響に設定しています」とのこと。そうした特性を生かして、TheGLEEではライヴ・レコーディングのハイレゾ配信などを行うレーベルも展開されています。さて、そんなホールのステージに設置したハイエンド・オーディオのリスニングはいかがだったでしょう?
「音響的にちゃんとデザインされているからか、響きが邪魔になることもなく、ちょっと大きめの試聴室という感じで心地よく聴くことができました。オーディオ・システムも、すごく奥行きを感じさせる音で、視覚的にも舞台が見えるようで面白かったです。特にウィリー・ネルソンの『Summertime』なんか、実際に目の前でバンドが演奏してくれているようで(笑)、音のリアルさという点では際立っていましたね。このアルバムはバランスの良さをストレートに押し出している感じで、ミックスでの処理はあえてあまり加えていない印象でした。最初に聴いたクリス・シーリーのマンドリンもすごく良かったですね」

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 そして、今回の影の主役と言えるのが、CHORDの新しいCDトランスポートBlu MkIIとD/AコンバーターDAVEの組み合わせによる“前人未踏のCD再生”。44.1kHzのCD音源を最大705.6kHzにまでアップサンプリングすることにより、ハイレゾ相当の高音質が望めるそうで、「それこそがCHORDの目指すものであり、CDが本来持っている音なのです。今日は新しいCDの世界をお聴きください」とタイムロードの村上遼さん。その音質は、バラカンさんにはどう届いたのでしょうか。
「今日のCDの音は本当に見事でした。ここまで3次元的な音が聴けるとなると、際限なく音楽に没頭して、次から次へと聴きたくなってしまいます。今日のCDは人工的な感じのアルバムはあまりなく、あえてシンプルなものを選んできましたが、もっと作り込んだ感じの作品やライヴ・アルバムなど、違ったタイプの作品も聴いてみたいですね。または管楽器をフィーチャーしたものやファンキーなアルバムをどう鳴らせてくれるのかという好奇心も湧いてきます。今日は、ミニマルな編成によるオーガニックな演奏の音楽を中心に聴きましたが、それぞれに奥行きを感じることができ、楽しい試聴になりました」

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TheGLEE×CHORD×TADの贅沢なCD再生に、「奥行きも感じられる立体的な音像が素晴らしいですね」とバラカンさん

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ルーム・アクースティックにこだわったTheGLEEのホール。あえて残響を抑えた設計となっており、必要に応じてスピーカーからリヴァーブを付加することも可能だそう

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目指したのは“森の響き”……当ホールの特徴を語るTheGLEEの甲壮志さん

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CDという身近なソースの音質を大きく向上させてくれたCDトランスポートのBlu MkII(上)と、その下のD/AコンバーターDAVE。CDトランスポートはCDからデジタル・データを読み取り、D/Aコンバーターにそのデータを送ってアナログ音声に変換する。通常のCDプレーヤーではこれらの機能が一体になっているが、筐体を分けることで、それぞれの機能を極限まで高めることが可能だ

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この日の試聴はすべてCD

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Blu MkII+DAVEによるCD再生のメリットを解説するタイムロードの村上遼さん

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スピーカーは、音像定位・音場表現とも安定した出音で試聴を盛り上げてくれたTADのCE1

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美しい筐体デザインもCHORDの特徴。製品はすべてハンド・メイドで組み上げられている。下は、同じくCHORDのパワー・アンプSPM 1200 MkII

◎試聴システム

CDトランスポート:CHORD Blu MkII
D/Aコンバーター:CHORD DAVE
パワーアンプ:CHORD SPM 1200 MkII
スピーカー:TAD TAD-CE1
スピーカー・スタンド:TADST2-K
ラック:CHORD Choral Ensemble Stand

ACOUSTIC LIVE HALL
TheGLEE

東京都新宿区神楽坂3-4 AYビル B1
Tel.03-5261-3124
http://theglee.jp

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